<本>おしゃべりな銀座 銀座百点編
タウン誌「銀座百点」に掲載されたエッセイをまとめたもの。
岡田茉莉子さんや金子國義さんの描く昭和の銀座の思い出話は華やかで羨ましい。
朝井リョウさんとかが銀座百点に載っている!というのは新鮮なおどろき。
ジェーン・スーさんのエッセイが胸に迫る。
サンモトヤマやファミリアに通ったお母さんとの思い出。
その後日本経済もスーさんのご実家の経済状況も乱降下し、今はマロニエゲートからユニクロという銀ブラコース。
プランタン銀座、なくなっちゃったんですよね・・・、今はマロニエゲートなんですよね・・・。
ノンフィクション作家の高野秀行さんの「銀座でオシャレに!」な顛末が面白いです。
助っ人として内藤旬子さんの名前が出てくるのだけど、その前に内藤さんのエッセイが収録されてるので、知り合いのような気持ちで読める(笑)
<本>月下美人を待つ庭で 猫丸先輩の妄言 倉知淳
猫丸先輩シリーズ、久々の新刊。
東京創元社では「猫丸先輩、飄々の帰還!」というコピーを掲げてて、「飄々」ってとこが猫丸先輩だな、と笑いました。「堂々の帰還」じゃないのね。
今回の表紙絵はオオタガキフミさんというイラストレーター。
猫丸先輩と言えば、唐沢なをきさんのおめめ真ん丸姿ですが、オオタガキさんの猫丸先輩はスタイリッシュで、でもかわいさもあってステキ!
雑誌掲載時は各話に扉絵もあったらしいので、単行本でも再現してほしかったなー。
「妄言」というタイトル通り、それぞれの「謎」に猫丸先輩がひと通りの解決は示すけど、「ほんとかどうかは分からないよ?勝手に推理してみただけだよ?」というスタンス。
でも「日常の謎」にはこれくらいのスタンスでもいいのかなー、とは思う。
そこまでは他人が推測してもたどりつかないだろう!という結論になる話もいっぱいあるので。
猫丸先輩がパソコンやスマホ関係いっさいダメとか、タバコはくわえてないと推理の調子が出ないけど吸いはしないとか、時代の経過を感じさせる描写も多かったです。
いつまでも猫丸先輩にはふらふら落ち着きどころのない「フリーター」で「先輩」でいてほしいな・・・、とっくに猫丸先輩の年齢追い越しちゃったけど・・・(それをいうなら江神さんも、火村&アリスも・・・)。
<ネタバレ>
「ねこちゃんパズル」
八木沢くんも久しぶりー!元気そうでなによりー!とのっけからテンション上がってしまいました。
前にはちょこっとしか出てこなかったアルバイトのみゆきちゃんもがっつり登場。
しかし猫丸先輩の出題した「パズル」はちょっとルール違反では。
「事前準備あり」ってきちっと言ってほしい(特に言ってないからこそなんでもありなのかもしれないが)。
「恐怖の一枚」
推論で妄言で、現実にはそんなことないかもしれないよ?のスタンスがかえって上手く作用してるのでは、と思うのがこの話。
「真実はこうだ!」って言われたら、いやいや、こじつけじゃん・・・、と思ってしまうけど、こんなんだったりしてねー、ははは、と言われると、もし本当だったら、の恐怖心が強くなる。
「ついているきみへ」
一緒に出掛けて待ち合わせするんだったら連絡先くらいは交換しとこうよ・・・。
LINE交換だけで他の個人情報をぜんぜん教えてもらえない、とかだったらまだわかるかな?
おじさんパーソナリティーが若い女性に大人気な理由は謎のままなんですね。
「月下美人を待つ庭で」
抒情的な作品、雰囲気があっていい。
最後に登場する猫丸先輩の存在にほっとさせられる。
地価が上がったという情報で(やっぱり地上げ目的・・・?)とまんまとひっかかってしまいました。
猫丸先輩に知れたら「お前さんはほんとに早とちりだね」と八木沢くんよろしく罵倒されそう。
塀がなくて地続きで花が咲き乱れる庭、街頭みたいな常夜灯、ベンチ、ときたら公園みたいでふらふらと誘い込まれる、という理屈はわかるけど、ベンチの背後に窓があったらやっぱり人家感強くて冷めないかな・・・(窓や扉のない壁だけだったらわかるかも)。
<本>「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出 角野栄子
角野栄子さんの今までいろんなところで発表したらしきエッセイをまとめたもの。
角野さんが保管してた原稿が元らしく、発表場所・時期が明記してないものもたくさん。
いつの時代か、というのが結構重要になってくると思うので、できれば知りたかったなー。
「魔女の粉」というエッセイに出てくるブラジルの友人・クラリッサが魅力的。
名門の生まれで教養もあって、でもお金は使い切ったと言ってそれに執着もしてない。
日本に角野さんが帰ってきたあと来日し、しばらく暮らしていたけど、ふいにいなくなり、京都に行った時偶然再会するけど、「旅行中だから住所はないの」「さよなら」と去ってしまう・・・。
ドラマティックな映画のヒロインみたい!恰好いい!!
ほかのエッセイにもちょっと描写されたりしてて、思い出深い人なんだろうな、と思います。
お正月に実家の一族20人以上集まってわいわいやる話も楽しかった。
私も長らく親戚大勢で集まるお正月だったので親近感が湧きました。
月日が経って今は行われなくなっちゃったんだけど、角野さん家はどうなのかな・・・。
紀伊國屋書店の出版部で若いころ働いてた時の思い出話もよかった。
岡本太郎が来社したのをのぞきに行ったり、西脇順三郎の名前が出てきたり、とにかく豪華。
この文章が紀伊國屋書店発行誌に掲載されてた、というのがいいなー。
<雑誌>Feel Love vol.8 特集・森見登美彦 拝啓太宰治さま(2010年・祥伝社ムック)
たまたま見つけた『Feel Love』で森見登美彦特集が組まれていたので。
太宰治生誕100周年記念、とのことだけど、『Feel Love』って恋愛小説に特化した文芸誌じゃなかった?と思いましたが、『新釈 走れメロス』が祥伝社から発売される、そのプロモーションを兼ねてだったんですね。
発売記念のサイン会では「スタッフは書店が用意してくれた桃色ブリーフのブローチをつけ・・・」というキャプションと写真が添えられてましたが、イヤだなそれ・・・(苦笑)
太宰の足跡を追うグラビアでは、三鷹や井の頭公園の風景の中にたたずむ森見先生の写真が新鮮(京都のイメージだから)。
「太宰が大学の友人だと仮定して森見先生が書いた手紙」もだらだら過ごしてる大学生同士、みたいな雰囲気が出ててよかった。
太宰と森見先生の人生を対比させた年表も。
森見先生は奈良出身だけど、幼少時大阪の万博公園の近くに住んでたことがあったんですね!
『太陽の塔』で京都が舞台なのに太陽の塔が重要モチーフになってくるのはなぜか、と思ってた謎が解けました。
年表は太宰の没年に合わせ、森見先生の当時の年齢から10年くらい先まで予想で書かれてましたが、2020年の現在はもうそこに追いついてますね。
杉浦さやかさんの『レンアイ滝修行』が連載として掲載されてて、おおー、と思いました(連載終了後、単行本でまとめて読んだ)。
次号予告は「三浦しをん、デビュー10周年記念特集」になってて、それも読みたい!と思った。
そうか、しをんさん、2000年デビューだからか・・・、もう20周年も過ぎたんだな・・・。
『Feel Love』自体はもう廃刊(休刊?)になってるみたいです。
<本>新釈 走れメロス他四編 森見登美彦
再読。
日本文学の名作を「森見流」に換骨奪胎して書き直した5編の物語。
面白かった。
各作品の登場人物たちがちょっとずつ交差しているあたりも好き。
私は「山月記」がすごく好きなのでどうなるかな、と思ってたんだけど、「自意識・自尊心の高さ」が上手く「腐れ大学生」にマッチしててよかった。
「走れメロス」は、原作の教訓的な「友情の美しさ」をぐるんと反転させたドタバタコメディになってて面白かった!
「桜の森の満開の下」は原作の美しさ・怖さが、うまく置き換えられてて美しい。
「百物語」は未読なので原作からどう料理されているか不明だけど、前4作の登場人物たちがオールスター出演、というおもむきがある。
「伸び縮みするケモノみたいなの」は、『きつねのはなし』に出てきたアレですかね・・・。
表紙や中表紙で、各作品のモチーフがアイコンのようになっているのだけど、「走れメロス」は桃色ブリーフ・・・。
更にあとがき及び巻末の「初出」のページの下にあしらってあるのが、「桃色ブリーフを履いて踊る3人の男のシルエット」・・・。
いやー!!(笑)シンプルでスタイリッシュで可愛さもあるのがまた(笑・山本祐布子さんという方のイラストみたい)。
<本>ぐるぐる問答 森見登美彦氏対談集 森見登美彦
文字通り森見登美彦さんの対談集。
14人の人と対談してます。
いわゆる芸能人な、劇団ひとり、本上まなみ、漫画家の羽海野チカ、同業の小説家・・・。
ウミノ先生はもともと好きだし、『夜は短し歩けよ乙女』の文庫版解説(イラストで)も面白かったので、読むの楽しみでした。
そして森見さんにとって本上まなみさんはマドンナだったんですね・・・。
確かに自転車「まなみ号」ってあったわ。
ラストの「10年前の森見氏」と「現在の森見氏」の対談が面白い。
「君は大学院で竹の研究をしているだろう。しかしいずれ気づくのだよ。君が好きなのは竹林にたたずむことであって、生化学的に竹の謎を解き明かしたいわけではない。」
ここ、笑うと共に納得しました。
好きなんだけど、どの方向性から「好き」なのかわからなくて、手段を間違えちゃうことあるよね!
表紙や文中のイラストがかわいくて、誰の絵だろう?と思ったら、「suicaペンギン」の坂崎千春さんでした。
そういえば表紙にペンギンがいるわ!
<本>奇譚を売る店 芦辺拓
「ーまた、買ってしまった。」
すべてこの言葉から始まる6編の物語。
精神病院のパンフレット、映画にまつわる資料の綴り、古本屋で買い求めたものたちから始まる奇譚・・・。
古風な本のつくり、活版印刷のようなフォント、表紙と扉絵に配されたゴシックとユーモアがいい感じに配分されたひらいたかこさんのイラスト(エドワード・ゴーリーみたい)。
話と本の作りがすごく雰囲気が合っています。
単行本で読んだのだけど、文庫版も世界観に合ったつくりになっているらしい。チェックしてみようっと。
語り手は作者本人らしき作家で、もちろんフィクションですが、「大学のミステリ・サークルから筆記アンケートが来たら、やけに熱心に答えて、収録の見込みのない小説とか提供しちゃう」とか、「古本屋の主人の態度に嫌気がさし、古本屋で買い集めたものでも、手放すときには新古書店に売る」とか、実感のこもった記載にうんうん、と思いました(苦笑)
<ネタバレ>
「青髭城殺人事件 映画化関係綴」
不老不死のまま生き続ける美少女、というモチーフが好きなので、このお話ツボでした。
「薔子」という名前もきれい。
そして思わぬオチでしたが納得。
しかし「浦戸(ウラド)」かと思ったよ・・・。