<本>作家の人たち 倉知淳
「作家と編集者、出版社」をテーマにしたブラックショート小説集。
自虐的な寡作ミステリ作家ネタが出てきたり、出版界の内側暴露?的なネタがあったり。
これはあの人だろうなー、と思わせるもじった作家名や出版社名ににやにやしてると、急に実名が出てきて、驚いたり。
もじった固有名詞はほかの話でも出てくるので、なんとなく世界観がつながってるんだろうなー、とか、この賞主催するんだからやっぱりモデルはあそこだよね、と納得できたりして楽しかったです(笑)
幻冬舎のWebで倉知さん代理(?)の作家さんと編集者の対談記事があったのですが、
www.gentosha.jpそれによればやはり倉知さんはデビュー直前まで役者業をやっていたと・・・。
決行大きい劇場の名前が挙がってるので、「商業演劇にその他大勢として出演」という感じだったんでしょうか(ミュージカルでいうアンサンブルみたいな)。
劇団主催したり所属したりって感じではなかったのかな・・・、いや、それをやりつつ商業演劇に出るというのももちろんあるだろうけど。
年齢を見るとちょうど30歳くらいで作家デビューしてるんですね。
ほんとに「猫丸先輩」だなあ・・・。
あと、デビューしたころは「1年に1冊本を出せば、それで1年食っていける(節約生活だけど)」収入が入ったそうです。
「冷蔵庫が空になるまで仕事をしない作家」という言われ様はあながち外れてもいないのかも。
<ネタバレ>
「押し売り作家」
出版社の名前のもじりが楽しくてにやにやしてたら、まんまとひっかかってしまいました。
まさか「倉ーなんとか」さんが複数いるとは思わなかったよ・・・。
しかし改めて表紙を見ると、ばっちりネタバレしてますね。
「夢の印税生活」
読んでてけっこうつらかった・・・。
「受賞したからといってすぐに会社勤めを辞めちゃダメ」と編集者に言われた、というのは、『私がデビューしたころ』にもありましたなあ。
有栖川有栖さんは勤め先を辞めて専業作家になる決心をしたときに、印税と収入を計算した、とエッセイに書いてましたね。
特に書店チェーンに勤めてたからそこらへんの計算もシビアだったんだろうなー。
「らのべっ!」
これもつらかった。
編集者が対象への愛情なく、効率だけでばりばりやって出世していくタイプなんだな、と思えば思うほど周囲のあれこれが悲しい・・・。
「先生」が文章を書く方ではなくイラストレーター、というひっかけもありましたが、これも「文はどうでもいいからイラスト重視」ということで悲しい・・・。
「文学賞選考会」
又吉さんに似た名前があるなあ、とは思っていたのですが、そうきたか。
これはそれほど読後感がつらくありませんでした。
主人公が周りを出し抜いてやるぜ、という野望を隠しもってたからか?