<本>凶鳥の黒影 中井英夫へ捧げるオマージュ
『虚無への供物』&作者の中井英夫に対するオマージュ小説&エッセイを収めた本。
中井英夫没後10年の企画だったのかな?
こんな企画本が出ていたとは知らなかったので、読むのがすっかり遅くなってしまいました。
小説もエッセイも「中井英夫」テイストにあふれていて楽しい。
有栖川有栖先生の「彼方にて」は最後の仕掛けで、そうだったのか!と世界が反転するような感じが良い。
皆川博子さんの「影を買う店」は先にネットで感想を読んでしまったので、モデル?と思われる人物があらかじめ分かってしまってからだったのが残念・・・、自分が悪いんですけど。
三浦しをんさんのエッセイは「久生のおしゃれぶり」について触れていて、そうそう、そこがいいんですよねー!と話しかけたくなる同感。
昭和中期のお嬢さんっぷりあふれる服装の数々(その描写)たまりませんね・・・、和服姿の描写が特に好き(真っ白なシールのコートなんて!)。
『虚無への供物』がテレビドラマ化されたことがあると聞いて(どんな出来だったんだ・・・)と戦々恐々としてたのですが、長野まゆみさんが褒めてて驚いた。
なんとなく長野さんはそういうものけなしそうな気がしてたので・・・(個人の偏見です)。
「もともと吹越さん目当てで見たのである。説明がなくても吹越さんの演じる役は『両利き』と決まっている。」というくだりが、うわあ、この自分勝手な論理を平然と当然のように言い放つ(反論は受け付けない)、長野節だなあー!!となつかしさを感じました(笑・長野まゆみさん好きです)。
本多正一さんの「あとがきにかえて」が、『押絵と旅する男』と『虚無への供物』のオマージュになっていてとてもいい。文章うまいな・・・。
タイトルの『凶鳥の黒影(まがとりのかげ)』は『虚無への供物』の登場人物が「これから書こうと思っている」と嘯く小説のタイトルなのですが、この『凶鳥の黒影』自体を書いた人はいなかったんだな・・・、とふと思いました。
いや、ものすごい長大巨編になってしまうだろうからとてもアンソロジーには入らないでしょうが・・・。