<本>街角には物語が・・・ 高楼方子
城壁に囲まれ、街並みには古い時代の面影を残し、観光客もやってくる「旧市街」。
その旧市街の中で暮らす人々の物語・・・。
古い街並みを舞台に、1話ごとに主人公が変わる連作。
舞台は共通してる(通りの名前やお店の名前とか出てくる)けど、人物はほとんど再登場しないな・・・、と思っていたら、最後の話に今までの登場人物大集合!
フィナーレって感じでよかったです。
「終点まで」に出てくる、学生時代からの友人である中年女性2人は、最終話では女学生時代の2人として登場するので、「終点まで」は2,30年先の未来の話なのか?
最初と最後の話の主人公である「ピッパ」は妄想好きですぐお話を作っちゃう少女なので、ひょっとしたら各話はピッパが旧市街で見かけた人々を題材に、頭の中で作り上げた物語だったのかもしれないな・・・、と思いました。
高楼方子さんの作品は、舞台設定もキャラクターもまさにファンタジー!って感じなのに、その心理描写がすごく現代的というかシリアスというか、「あるある!」って感じなんですよね。
「つまりほかに親しい友人ができて、自分がないがしろにされるかもしれないといったークート君はそういう目にあいやすいたちだったー心配なしに、安心して交際することができたのだった。」
このくだりなんか、わかるわー!と思ってしまう。同時にちょっと胸がいたい・・・。
この「胸の痛さ」が常にあるので、高楼方子作品を読む時にはちょっと覚悟がいる・・・。