<本>月下美人を待つ庭で 猫丸先輩の妄言 倉知淳
猫丸先輩シリーズ、久々の新刊。
東京創元社では「猫丸先輩、飄々の帰還!」というコピーを掲げてて、「飄々」ってとこが猫丸先輩だな、と笑いました。「堂々の帰還」じゃないのね。
今回の表紙絵はオオタガキフミさんというイラストレーター。
猫丸先輩と言えば、唐沢なをきさんのおめめ真ん丸姿ですが、オオタガキさんの猫丸先輩はスタイリッシュで、でもかわいさもあってステキ!
雑誌掲載時は各話に扉絵もあったらしいので、単行本でも再現してほしかったなー。
「妄言」というタイトル通り、それぞれの「謎」に猫丸先輩がひと通りの解決は示すけど、「ほんとかどうかは分からないよ?勝手に推理してみただけだよ?」というスタンス。
でも「日常の謎」にはこれくらいのスタンスでもいいのかなー、とは思う。
そこまでは他人が推測してもたどりつかないだろう!という結論になる話もいっぱいあるので。
猫丸先輩がパソコンやスマホ関係いっさいダメとか、タバコはくわえてないと推理の調子が出ないけど吸いはしないとか、時代の経過を感じさせる描写も多かったです。
いつまでも猫丸先輩にはふらふら落ち着きどころのない「フリーター」で「先輩」でいてほしいな・・・、とっくに猫丸先輩の年齢追い越しちゃったけど・・・(それをいうなら江神さんも、火村&アリスも・・・)。
<ネタバレ>
「ねこちゃんパズル」
八木沢くんも久しぶりー!元気そうでなによりー!とのっけからテンション上がってしまいました。
前にはちょこっとしか出てこなかったアルバイトのみゆきちゃんもがっつり登場。
しかし猫丸先輩の出題した「パズル」はちょっとルール違反では。
「事前準備あり」ってきちっと言ってほしい(特に言ってないからこそなんでもありなのかもしれないが)。
「恐怖の一枚」
推論で妄言で、現実にはそんなことないかもしれないよ?のスタンスがかえって上手く作用してるのでは、と思うのがこの話。
「真実はこうだ!」って言われたら、いやいや、こじつけじゃん・・・、と思ってしまうけど、こんなんだったりしてねー、ははは、と言われると、もし本当だったら、の恐怖心が強くなる。
「ついているきみへ」
一緒に出掛けて待ち合わせするんだったら連絡先くらいは交換しとこうよ・・・。
LINE交換だけで他の個人情報をぜんぜん教えてもらえない、とかだったらまだわかるかな?
おじさんパーソナリティーが若い女性に大人気な理由は謎のままなんですね。
「月下美人を待つ庭で」
抒情的な作品、雰囲気があっていい。
最後に登場する猫丸先輩の存在にほっとさせられる。
地価が上がったという情報で(やっぱり地上げ目的・・・?)とまんまとひっかかってしまいました。
猫丸先輩に知れたら「お前さんはほんとに早とちりだね」と八木沢くんよろしく罵倒されそう。
塀がなくて地続きで花が咲き乱れる庭、街頭みたいな常夜灯、ベンチ、ときたら公園みたいでふらふらと誘い込まれる、という理屈はわかるけど、ベンチの背後に窓があったらやっぱり人家感強くて冷めないかな・・・(窓や扉のない壁だけだったらわかるかも)。