椿 読書録

読書とその他楽しみの記録です。

<本>インド倶楽部の謎 有栖川有栖

作家アリスシリーズ、国名シリーズ。

神戸の街が舞台になっており、紀行ものっぽさもある。

異人館にトアロード、港に南京町・・・。

神戸に行きたくなってしまった。

それぞれの位置関係が分かるように、神戸の地図を付けてくれてるとよかったなー。

うみねこ書房」の描写が細かいので、実在のお店なのでは?と思ったら、やはりあとがきに実在のお店だと書いてあった。

 

野上刑事の出番が多く、内面も描かれたのが面白かった。

家庭が円満そうでちょっと意外(笑)。

 

作中でアリスが今までの事件にタイトルを付けていることが明かされ、それがそのまま今まで出た作家アリスシリーズの題名、というくだりには、おおお!メタ展開!と思いました。

火村が「『予告された死』か?」というと「それは章題だ」と返すんだけど、その文章が書かれてる章の章題がまさに「予告された死」だという・・・!

『熱帯』を読んだばかりだったので、(物語中物語!?)とどきどきしてしまいましたよ。

 

<ネタバレ>

 

 

動機が「前世にある」ということ自体はいいと思う。

のだが、メンバーたちがそこまで前世のつながりを信じ込むところにもうちょっと理由というか納得感が欲しかったな・・・。

作中人物が「信じてる」っていったらそういうものかもしれないが、もともと「前世を信じて」研究したり、そういうつながりで集まったわけじゃないオトナの集団が、言われたからってあっさり信じちゃうものだろうか、とどうしても引っかかってしまう。

すごく話や雰囲気作りがうまくってその気にさせられたとしても、その相手に現実的な脅迫されたら、「前世の仲間感」も一気に冷めないか?

それこそ「前世であなたは私を裏切ったのだから、今生で償うべきだ」的な話のもっていき方をする方がまだ良くはないだろうか。

せめて、「稀代のストーリーテラー」であった、という事例がもうひとつふたつ挙げられてると納得できたかも。

学生時代にも友人たちに「前世で一緒だった」という暗示をかけて、集団ヒステリーみたいになってちょっとした騒ぎになった、とかいうエピソードが出てくるとか・・・。

 

花蓮ちゃんは聡明でしっかりした高校生、という描かれ方をしてますが、そんなしっかり者が「いい年した大人が集まって前世だなんだと」やってるさまを見たら、軽蔑したり引くんじゃないだろうか。

お父さんに対して作中のような態度になるだろうか・・・。